まず、電源は乾電池4つを用いて、±3Vとしました。これは以降に述べる各ICの動作範囲を考慮したものです。 以降、入力側から順に書いていきます。
入力信号のジャックの仕様は、勿論、使用者側の様々な条件で決めれば良いことです。
今回は、RCAジャック、プラグが安価な事、RCAケーブルが100円ショップでも買えるという事、直流信号を想定している事、などを考慮しました。
私が良く使うBNCケーブルとの変換アダプタが安価に入手できる事も重要でした。
学生を想定する場合には、バナナジャックの方が極性を意識させやすくて、教育的に好ましい場合もあるでしょう。
オペアンプはLM358を用いました。入手製と価格を重視しました。今回は両電源で作りましたが、信号の極性を固定するなら単電源でも使えるでしょう。
このオペアンプを用いた反転増幅器の一つ目の機能は、入力信号のインピーダンスが高い場合を想定して、信号のインピーダンスを下げる事です。
とは言っても、入力インピーダンスはたかだか100kΩです。1MΩ程度にした方が使いやすいかも知れません。
また、第二の機能として、マイク入力にあまり高い電圧をかけたくないので、電圧を10分の1に落としています。
とは言っても、マイク入力の一般的な仕様は不明なままです。
帰還抵抗に可変抵抗を使っているので、信号が振り切っていたら更にゲインを下げる必要があるでしょう。
勿論、マイク入力の録音レベルは、パソコン側からもある程度調整できます。
帰還抵抗に並列のコンデンサ(0.1μF)はスイッチングノイズの低減の為に入れましたが、効果の程は良く分かりません。 スイッチングノイズの低減にはもっと良い方法があるかも知れません。
シュミットインバータ(74HC14)とその周辺の回路は簡単な発振回路です。
800Hz付近で発振しました。
抵抗器、コンデンサの値を変えれば発振周波数をもっと上げる事もできますが、10kHz付近でやると、なぜかパソコンに上手く信号が入力できませんでした。
私の使っているサウンドカードにはローパスフィルタが入っているのかもしれません。
逆にスイッチング周波数をあまり下げると信号検出の誤差や雑音や速度応答が悪くなると考えられます。
アナログスイッチにはADG419を用いました。正直、手持ちがあったのでこれを使ったのですが、一つだけ問題があります。
データシートを見ると、スイッチを切り替えるロジックの為の電源電圧は+5Vが想定されていますが、今回は乾電池二つの+3Vを用いています。
現状での動作していますが、ADG619を用いれば仕様上の不安は取り除けます。
勿論、FETでアナログスイッチを設計した方が安いでしょうが、部品が増える分、製作は面倒になります。
カップリングコンデンサには積層セラミックの1μFを用いています。 どうせ、サウンドカード側にもカップリングコンデンサがあるのでしょうが、 マイク端子に直流電圧が印加されており、その電圧値がパソコン毎に異なる可能性があるため、アナログスイッチの電源電圧の範囲を超える可能性があります。 また、0.1μFだと、800Hzの信号がかなり減衰してしまいました。
同様の物を作りたい方のために、参考までに各パーツの最新(2010年6月14日)のネット販売価格を調べてみました。
品名 | 単価(円) | 個数 | 小計(円) | 販売単位 |
RCAジャック | 40 | 1 | 40 | |
LM358 | 20 | 1 | 20 | 5個 |
抵抗100k | 1 | 2 | 2 | 100本 |
コンデンサ0.1u | 10 | 5 | 50 | 10本 |
可変抵抗10k | 80 | 1 | 80 | |
74HC14 | 47 | 1 | 47 | |
コンデンサ0.01u | 10 | 1 | 10 | 10本 |
ADG419 | 285 | 1 | 285 | 5個 |
コンデンサ1u | 10 | 1 | 10 | 10本 |
ステレオミニジャック | 50 | 1 | 50 | |
基板ICB288 | 84 | 1 | 84 | |
電池ボックス | 60 | 2 | 120 | |
合計 | 798 |
パーツの価格合計は1000円を切っています。
但し、電池、ケース、ステレオミニジャックケーブルを含んでいません。
これらは100円ショップで買えるとしても、ぎりぎりで1000円を越えてしまうでしょう。
また、ハンダや銅線なども必要です。
抵抗やコンデンサは必要個数だけを買うとするともう少し高くなるでしょう。
問題は、アナログスイッチです。
個人の場合にはMAX4503の方が入手性がいいかもしれません。
但し、SPSTなので、アナログスイッチの出力にプルダウン抵抗をつける必要があるでしょう。
今回、新しい試作の方法を試してみました。
片面のユニバーサル基板(蛇の目基板)を用います。
銅のランドが付いていない面(いわゆる部品面)に銅箔テープ(NITTO)を貼って、ベタグランドに使用します。 こちらを裏を呼びます。
銅のランドのある面(半田面)にほとんどの電子部品を付けます。 こちらを表と呼びます。
部品の足は表から基板の穴から裏の銅箔を貫いて刺しますので、安定します。
半田付けは表面実装の様に表から行います。
適宜、U字に曲げたスズメッキ線を表から刺して、ランドとして使います。
裏の銅箔は、表から足が突き出た部分を見て、足の周辺をアートナイフで剥ぎ取ります。
裏にある配線は、原則として電源、パスコンとグランドに限定します。 但し、可変抵抗や信号端子など、端子形状に応じて柔軟に対応します。
裏のパスコンや電源ラインの接続の為に、生基板を接着する方法を用います。
この方法はユニバーサル基板を用いた普通のやり方と比べると時間は掛かりますが、ベタグランドを採用した方法としては早く作れるのではないでしょうか。 また、回路図通り表から配線が見えるので、動作確認がしやすかったです。 また、ベタグランドの銅箔テープを剥ぐ位置が貫かれた足で確認しやすいです。 更に、スズメッキ線で簡単にランドを広げられるので、回路の修正が容易です。
今回の回路では出力にスイッチングノイズが乗っているのですが、
これでもベタグランドの効果があるのか、ベタクランド無しとの比較はやっていません。
拡張性という点では、表面実装部品にもシール基板で対応しやすいですし、FCZ基板との相性も良いと思われます。
電子回路の試作の方法の是非は、信号周波数、試作者の腕前、設計の進め方など様々な条件に依存すると思いますが、私は気に入っています。