研究内容

1. 粉体・流体およびその混合系の物理と応用

固体粒子の集団として定義される粉体と流体(気体・液体)は地球表層環境に普遍的に存在します.それは図に示しているように,地球深部のマグマや断層,大気中での飛砂やエアロゾルに至るまで幅広い現象と関連します.特に地球表層では,基礎物理や自然現用だけでなく工学応用などにおいても粉体・流体系は重要となります.これらの現象を支配する基礎法則を明らかにしつつ,各現象の理解を深めることを大きな研究目標としています.図で赤字の部分はこれまで特に具体的研究を行ってきたトピックになります.

最近のテーマ

以下で紹介するこれまで取り組んで来たテーマの他に,最近では「土壌団粒」「マッシュ状物質」「washboard road」などについても研究を行っています.研究に取り組む各人が真に面白いと思うトピックやテーマについて深く掘り下げていく方針としています.

衝突

粉体層に固体弾もしくは液滴などを衝突させることにより生成されるクレーター形成現象,衝突による傾斜の緩和過程,固体弾の受ける衝突抵抗力などについて研究を行っています.海外との共同研究で微小重力衝突実験なども行った実績があります.

液滴の粉体層への衝突
Katsuragi, PRL 104, 218001 (2010)
Katsuragi, JFM 675,552 (2011)
粉体クラスターの
微小重力衝突
Katsuragi & Blum, PRL 121, 208001 (2018)
Katsuragi & Blum, ApJ 851, 23 (2017)
斜面への衝突によるクレーター
Takizawa & Katsugai, Icarus 335, 113409 (2020)
Omura, Takizawa, & Katsuragi, MNRAS 502, 293 (2021)

振動

粉体層に衝突を加えると,対流や浮上,うねりなど様々な現象が起こります.粉を容器に入れて振動を加えると充填密度を簡単に上げられることは日常生活でも我々が実感できる現象です.また,傾斜地形に振動が加わると斜面崩壊が起こります.この過程は地崩れなどの災害現象や天体表面での地形緩和に関係する重要な素過程になります.このような振動やタッピングに関する物理やそれにともない起こる天体表面現象などについて研究を行っています.

タッピングによる
粉体内部応力発展の可視化
Iikawa, Bandi, & Katsuragi, JPSJ 84, 094401 (2015)
Iikawa, Bandi, & Katsuragi, PRL 116, 128001 (2016)
Iikawa, Bandi, & Katsuragi, PRE 97, 032901 (2018)
振動による
天体表面更新モデル
Yamada et al., Icarus 272, 165 (2016)
Yamada & Katsuragi, PSS 100, 79 (2014)
振動による砂山形状の緩和
Tsuji, Otsuki, & Katsuragi, PRL 120, 128001 (2018)
Tsuji, Otsuki, & Katsuragi, PRE 99, 062902 (2019)

圧縮

柔らかな物質(ソフトマター)の物性を調べる最も簡単な方法の一つとして一軸圧縮試験があります.この圧縮を様々な粉体物質(濡れた粉体,雪・水・固体流の混合物,階層構造を持つ粉体)などに適用し,基礎物理を明らかにすると同時に,生物生態(スナガニの巣穴の力学特性)や小天体地形などへの応用を研究しています.

濡れた粉体層中の空隙の圧縮
Shinoda et al., Sci Rep 8, 15784 (2018)
Shinoda et al., PLOS ONE 14, e0215743 (2020)
雪・水・テフラ凝集体の圧縮
Niiya et al., EPS 72, 148 (2020)
階層構造を持つ粉体の圧縮
Pacheco Vazquez, Omura, & Katsuragi, PRRes 3, 013190 (2021)

流動・固化

障害物まわりの
粉体サイロ流
Endo, Anki Reddy, & Katsuragi, PRFluids 2, 094302 (2017)
Katsuragi, Anki Reddy, & Endo, AIChE J 64, 3849 (2018)

通常の流体と異なり,条件によって流れたり固まったり多様な特性を持つ粉体・流体混合系などの物理特性を探るべく,流動や押し込みによる変形,それにともなう弾性波放射について研究を行っています.また,出口での閉塞現象やアーチ形成に関する研究も行っています.

粉体層の変形による超音波(AE)放射
Matsuyama & Katsuragi, Nonlin Proc Geophys 21, 1 (2014)
Tsuji & Katsuragi, PRE 92, 042201 (2015)
片栗粉濃厚懸濁液の衝突による突発固化
Egawa & Katsuragi, PoF 31, 053304 (2019)

破砕・パターン形成など

ガラスなどの脆性材料が衝撃等によりばらばらに破砕する際の統計的性質,山脈地形等に見られる自己アフィンフラクタルと呼ばれる性質を持つ形状の特性,高分子ゲルの重合時に表面に現れるパターン形成の問題などを研究していました.

破砕したガラス破片
Katsuragi, Ihara, & Honjo, PRL 95, 095503 (2005)
Katsuragi, Sugino, & Honjo, PRE 70, 065103 (2004)
Katsuragi, Sugino, & Honjo, PRE 68, 046105 (2003)
ゲル表面でのパターン形成
Katsuragi,EPL 73, 793 (2006)
自己アフィン成長界面概念図
Katsuragi & Honjo, PRE 67, 011601 (2003) Katsuragi, & Honjo, PRE 59, 254 (1999)

2. 生物システムの物理

生命現象の分子メカニズム

生命現象や生体物質を研究してみませんか?

このグループでは,生物物理学的手法を駆使して,生体物質の反応や複合体形成のメカニズムを解明しようとしています.特に注目しているのは,光情報の受容と伝達についてです.光は,エネルギー源としてのみならず,情報を伝搬する媒体としても重要な役割を持っているので,生物は様々な光情報受容システムを発達させてきました.光で反応を制御できることは,生物物理学的な解析をする上で有利であるとともに,解析から得られる知見により様々な生体反応の光制御が可能になることも期待されます.

配属学生・院生の研究

生体分子には複雑で不安定なものが多いので,解析に都合のよいシステムを使ってよい試料を測定することが重要です.ただし,それには不安定な生体分子を取扱うための地道な労力や,測定に関する工夫が必要となります.それを乗り越えることができれば,新しい機能を持つタンパク質を自ら設計して解析することも可能となります.

最近の大学院生や学部生の研究テーマ(例)

  • 光制御タンパク質を利用した複合体形成機構の解析
  • LOVタンパク質における光情報伝達機構
  • 動的光散乱法を用いたタンパク質-DNA複合体の解析
  • 偏光を用いた生体分子間相互作用の解析
  • 蛍光タンパク質を用いたタンパク質のDNA結合機構の解析
  • DNA結合タンパク質の光制御
  • 融合によるタンパク質の機能付加
  • 光応答性bZipタンパク質の相互作用解析

生物システムの物理についての詳細はこちら(久富准教授)